2011年05月30日

148㎝の女子高生が起業?

高校2年生の私の娘と、その友だちは、6月の文化祭で使用する
クラスTシャツの製作を任されたそうだ。

「なつかしいな・・・」、と思った。

文化祭と言うと、私も教師として何度も経験してきたが、ビジネス
を学び始めてからの文化祭では、いろいろとクラスの生徒に単純
ではあるが、「ビジネス」を教えて臨ませた。

今回は、その当時のことを紹介する。



2011.05.30.mon 05:55
From : Taichi Makino
藤枝の自宅officeにて、、、



        ◆高3の文化祭にて

当時、私のクラスの学級委員は、とてもビジネスに興味をもって
いて、最後の文化祭だから、「大儲け」をしたいと言ってきた。

内心、「おっ、来たな!!」

と、喜ぶも表情はあくまで冷静に、、、

「そんなに儲けを出して、どうしたいんだ?」

このように問いかけてみた。

「クラスの模擬店での売り上げで、一旦みんなから集金して
つくったクラスTシャツの代金をまかない、みんなに返金したい
さらに、それ以上の売り上げを出して募金活動に協力したい」

と答えが返ってきた。

ビジネスを始めるときは、この部分、「何のために」が重要だ。
この部分は、「創業の理念」とも言うが、これがしっかりとして
いないと、軸がブレる。

まあ、高校生の文化祭の模擬店であれば、このくらいの内容を
コミットメント (宣言する) していれば充分だろう。

さらに、具体的にTシャツ代全員分72,000円、募金を8,000円
で、計80,000円の利益が出るように目標をたてた。

社長は、里奈。

     148㎝の女子高生が起業?
身長148㎝の、ちっこい女リーダーだった。



        ◆ナンチャッテ株式会社

さあ、起業だ。

私は、代表取締役社長の里奈にこう言った。

「店の規模を大きくしないと、文化祭で一日80,000円の利益を
出すのは厳しいぞ、準備も仕入れも、生徒会からでる助成金の
5,000円が元手では、さすがにとても目標には到達しない・・・」

里奈は、「困ったぁ~!!」を連呼していた。

「なあ、株式を発行して、出資金を集めたらどうだ?」

「えっ!?」

っと里奈。

「模擬店をやる目的と、どんな工夫をして売り上げを出していく
のかをプリントでみんなの親に説明して、≪出資金≫を募って
儲けが出たら、配当を出せば協力してくれるかもだぞ・・・」

「そーか、そうすれば仕入れも大きくできて、うまく売れば売り上
げだって大きいもんね!!」

「そんじゃあさ、まず何すればいいと思う?」

「どんな店を出して、どんな工夫をして、どんな商品を売るかを
考えて、出資してくれる親に説明すればいいじゃんね!!」

「お前、賢いねぇ (笑) 」

こうして、ナンチャッテ株式会社が誕生した。



        ◆USPができたちゃった!!

「いったい何を売ったらいいんだろう?」

里奈は最初の壁にぶつかった。

クラスのみんながやりたいこと、売りたいものがてんでバラバラ。

確かに、個性豊かなクラスメンバーだから、1つにまとめるのは
初めから難しいって予想はできていたが・・・

第一回目の、「泣き」が入った。

「んじゃさ、それぞれやりたいことが一致している同士でチーム
を作らせて、専門店じゃなくて、ショッピングモールのような形
の店にしたらどう?ららぽーとみたいなイメージはどうだ!?」

泣いた子が笑った。

ちなみに里奈は、感情表現が豊かな生徒で、喜んでは泣き
悲しんでは泣き、感動すると泣きやまない娘であった。

すぐにクラスの連中は動いた。

好きな事自分の得意な事ができ、なおかつ、クラスの中で気の
合ったグループで出店できるのだ。

模擬店としても、割り当てられた1つの教室の中が、まるで縁日
の屋台のように、いろいろ回って楽しめる、、、

おまけに、好きな事、得意な事をやれるのだから、クラスの連中
のモチベーションは当然のごとく上がる。

これは、、、

このクラスのユニーク(U) なセールス(S) のポイント(P) になる。

USP、、、Unique Selling Propositionと呼ばれる、ビジネスの
独自性が誕生した。

ビジネス上のトラブルは、時としてユニークなビジネスのヒント
になり得るということを学ぶことができた瞬間だった。



        ◆必要経費と売り上げ目標

それまでがウソのようにみんなが楽しそうに動く・・・

正直、全てを自分が中心になってやらなくては、と思っていた
里奈は、代表取締役の意味が少しずつわかってきた。

自分は、全体のマネジメントが仕事だということに気が付いて
きたのだ。

それぞれのチームに、仕入れの予算を立てさせ、売り上げの
予想や、完売にもっていくための経営戦略をたせさせた。

初めはいい加減だった商品の値段設定も、売り上げ目標と、
予算額と、仕入れ額を考えて行うようになり、そちらの方が
何か具体的で達成感がありそうだと感じてきたようだ。

里奈は、全体の予算をまとめた。

当然、生徒会からの5,000円ではまかなえない。

模擬店を成功させて目標を達成するには、あと50,000円は
必要になることが具体的にわかるようになっていた。

すぐに50,000円分の株式を発行し、出資金をお願いするため
クラスの保護者あてに、「1株、2,000円」で出資を募るプリント
をつくった。

結局、60,000万円以上の出資金が集まった。



        ◆マーケティング

次に、里奈はどうやったら当日来るお客さんを、お店に数多く
引き寄せることができるのかを考えた。

これは、1人で考えてもなかなかアイデアが出てこない、、、

しかし、クラスの中でも意見をよく出すメンバーに声をかけて
「経営戦略会議」なるものを、昼休みや放課後をつかって頻繁
に開いた。

ここで里奈は気が付く。

 ・アイデアは人の数だけいっぱいある。
 ・どれが正しい、どれが間違っているなんて関係ない。
 ・ようは、アイデアはテストしてみる。
 ・結果が良かったものを続けてみる。

さすが、私が密かに一番マーケティングを教えてきた生徒だ。

まず、具体的には、、、

下級生のクラスに行って、リサーチからはじめた。

 ●食べ物だったらどんなものが欲しいか?
 ●どんな特典がつくと嬉しいか?
 ●タイムサービスがあったら利用するか?
 ●何かアトラクション的な要素を入れるとしたら?

次々と、リサーチの結果が集まってきた。

私は里奈にこう言っておいたのだ。

「いいか、お客さんが欲しいと思っているモノを売るんであって
お前たちが売りたいものを売るんじゃないんだ
どうやってそれを調べるかは簡単だろ、直接聞いてくればいい
んだからさ」

さらに、、、

「あと、これが欲しいというものを聞いて、アンケートに協力して
くれたお礼だって言って、何かの特典つけてあげればさ・・・
そりゃ当然嬉しいし、すでに欲しいものを売ってるって事前の
宣伝に自然となっているってこと、わかるか?」

このマーケティングは、かなり効果があった。

当日のお客様である、下級生の間で、、、

「何かあのクラスの先輩達が、すごく面白いことをやるみたいだ」

という噂が広がった。

そんな中、ある下級生が、里奈にこう言ってきたのだ。

「ねぇ、里奈先輩、自分当日はステージでバンドをやるんですよ
模擬店の食べ物がなくなっちゃうと悲しいんで、予約できません
かねぇ?」

文化祭の一週間前に、売り上げが立った瞬間である。

こんな現象は、誰もが予想できなかった。

代表取締役の里奈が、

≪先行予約注文≫をすぐに始めたのは言うまでもない。



        ◆文化祭当日

文化祭当日は、冬でもないのにサンタクロースの格好をさせられ
私は、店のオブジェと化していた。

クラスの連中は楽しそうだ。

よそのクラスでは、廊下や階段、また学校の出入り口に至るまで
「客引き」が横行していた。

我がクラスはというと、、、

のんびりしている。

しかし、開店からお客の出入りが一向に途絶えない。

売り上げ目標をかかげて、それを達成しなくてはならないという
悲壮感めいたものは全くなく、出資者である株主にタダで商品を
サービスする余裕までうかがわせた。

もうおわかりだろう。

その時の私のクラスは、文化祭の数日前までに、売り上げ目標
を達成し、経費を差っ引いた「利益」でも、目標を達成していたの
だった。

あとは、商売をお客さんと楽しむだけ。

とても楽しい一日となった。


・・・・・・・・・・・

ちなみに里奈は、現在大学生で、幼児教育の勉強をしている。

この間、年間の成績が学部内で2番になったと報告をしてくれた。

卒業したら、幼稚園の先生もいいけれど、幼稚園を経営したい
といっている。

もちろん、私が今度は本物のマーケターとして協力するってこと
は・・・

これも今さら言うまでもない









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Posted by Evolution Mind at 07:55│Comments(0)起業家育成塾
 
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